物語の舞台は東の国の小さな町、ミャスト。
時代から置いてきぼりだったこの町も、街灯が普及しだしたことをきっかけに急激に近代化し始めました。
しかしそんな輝かしい町の成長と比例するように、ミャストから行方不明者が続出するという不可解な事件が相次いでいます。




ミャストの外れにそびえ立つ大きな時計塔には、昔々閉じ込められた悪い魔法使いが住んでいると言われています。
魔法使いは犯した罪の罰として尽きることのない命を与えられ、たった一人で永遠に時計を刻み続けなければなりませんでした。
しかし近代化を迎えたミャストの人々にとって、もはやそれはただのお伽噺にしか過ぎません。
こうして魔法使いはその存在すら信じて貰えなくなってしまったのでした。




この町には、年に一度「厄災日」と呼ばれる丸一日太陽が顔を出さない日があります。
ずっと時計塔の暗闇にいる魔法使いが嫉妬して、一日だけミャストから太陽を奪ってしまうというのです。
ミャストの人々はこの日、朝食と昼食を抜いて晩餐を家族と盛大に行います。
アーニャは家を出てしまったトマシュを何とか呼び出して、家族全員で厄災日の晩餐をしたいと考えていました。
ごちそうは何を作ろう、トマシュはどうしたら家に戻ってきてくれるかな――まだ来ない厄災日を心待ちにするアーニャ。
それが最後の厄災日になるとは全く思いもしないのでした……。



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